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株式会社山田朱織枕研究所

オーダーメイド枕、オーダーメイドベッドおよび寝具・寝装の研究開発・製造販売・サポート・睡眠環境の改善のための情報提供・コンサルティング


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山田朱織枕研究所は、主にオーダーメイド枕の製造、計測、販売をしている会社です。睡眠姿勢革命(使用する枕を個人の好みでなく、医学的に根拠を持ったものに変えていくという意義)という理念を軸に、お客さんの肩こりなどの体の悩みの根本的な解決を目的に、医療の観点から枕を主として、その他掛布団などの寝具を取り扱っています。当社は、高さが使用者に合っていること、メンテナスし続けること、フラットであることが枕を作る上で重要だと考え、その三つの条件から考えた形状の枕を販売しています。お客さんに真摯に向き合い、展開していく当社を取材してきました。

代表は、施設一階、16号整形外科の院長である山田朱織先生で、論文でも発表している医学的な根拠をもった商品を開発、販売している所が他社との違いです。寝具の展開の一つとしてではなく、医療の中で必要だと思い、始めたという所が当社の特徴であり、立脚点です。
 オーダーメイドの枕を作るきっかけは患者さんからの声です。整形外科の枕外来という所で、手作りの枕指導を行っていました。枕という観点から、肩こりや頭痛などを解決することを目的に診療していて、解消の実感が体感的、臨床的にあり反響もありました。しかし、手作り枕を作る際必要な玄関マットなどを持っていないなどの理由で、患者さんから、「素材自体を先生が売ってよ」などの声があがりました。その声を受け、医者として悩む部分もありましたが、患者さんの声に押され、2003年に株式会社を立ち上げました。
 当社では、お客さんに適切な高さの、フラットな枕を販売しています。また、枕の形状の変化、体の変化が起こるためメンテナスし続けることが大事だと考え、当社では二年ごと更新の会員制度を採用しています。形状については、自然な形で寝返りを打つことが大事であるため、平らな形が適切と考えています。
 枕を作る際の計測方法は「現在の睡眠に関する悩みなどについて聞く枕カルテ」「座った状態での頭の形や肩幅背中の曲がり具合の確認」「寝た状態で、上向き、横向き、寝返りの3つの方法で行う計測」「確認のための仮眠」など全工程合わせて60分ほどで、丁寧に計測を行います。

 社員は、当社が理念として挙げる『睡眠姿勢革命』に共感し頑張っていける方を求めており、また、その考えに共感して入社してくる方が多いです。人数は社員が11名パートの方を含めて20名程で、正社員の年齢は20代、30代、40代、50代と満遍なく在籍しています。近年は理念に共感し入社する方が多いため、離職率は低めで、また、考え方が違うため、寝具関係の業界からの採用は一度もないです。販売の仕事がしたい、悩みを聞いて解決したい、資格はないが医療よりの仕事がしたい、という理由から入社する方もいます。入社すると事務職、企画・開発職など業務に関わらず、全員枕診断士(弊社の登録商標。枕の高さの調整方法という特許を取得しており社内認定を受けた社員に与えられる資格。)になる決まりで、研修を行うため入社前に枕やその他医療的な知識がなくても大丈夫です。
 枕診断士は実技を主とし、座学も含めた研修で1年程経験を積むことでなれます。目的は販売ではなく寝具を通し、お客さんの悩みを解決する事なので、お客さん一人ひとりに向き合うため必要な制度なのです。店舗型ということもあり、研修は比較的手厚く、個人の習得ペースに合わせ一対一で指導しています。これには2つ理由があり、1つ目は、枕の計測はお客さんとよいコミュニケーションをとりながら行うことが大事であり、作業を覚えるだけでは不十分な為です。2つ目は、計測技術は繊細なものである為、感覚を掴めるよう、近くで技術を学ぶことが重要である為です。販売の仕事のため、売って終わりに思えますが、会員制度を採用している事もあり、お客さんと長く付き合うチャンスのある仕事です。

数年ほど前までは、北海道、大阪など全国からお客様が来ていましたが、私はその状況が嫌でした。お客さんに交通費などの負担がかかるからです。そこで、諸費用を頂く形ではありますが、全国にある提携病院での販売を行う事にしました。商品の販売でなく、体の悩みの改善が目的のため、店舗の展開ではなく、全国の整形外科と提携をとり販売する、という方法をとりました。日本整形外科学会で多くの整形外科にご協力いただくため地道に声掛けをし、その結果現在は60件ほどの病院にご協力いただけることになりました。整形外科での処置は、一般的に湿布や注射など一時的なものが多いですが1番大事なのは普段の生活の習慣を改善し、根本的な解決をすることです。当社ではこれからも患者さんの生活習慣の改善のために枕を採用してくれる医師を増やして行きたいと思います。
 また、枕の計測を行った際に、枕の高さの重要さを体感し「うわ!すごい」と反応してもらえたときに嬉しさややりがいを感じます。そのような体感をしてもらうため、様々な角度から枕の可能性について広めていきたいです。

 会社の今後については『睡眠姿勢革命』を実現させる為に4つの事業展開の軸を設定しています。
 まず1つ目が、「基礎研究の充実」です。無呼吸や心拍など、新しい領域の研究も進めていき、他にも必要とされるものがないか研究していきたいです。2つ目が「商品の充実」です。既にベッドや布団なども販売していますが、今度はパジャマの販売も手がけてみたいです。3つ目が「サービスの充実」です。出張サービス、オンラインショップやアプリ開発などにもチャレンジしたいです。
 最後に「地域の展開」です。直営店は相模原と渋谷しかないので、もう少し店舗を増やし、提携病院は地域ごとの購入がしやすくなるよう全ての都道府県への導入を目指します。

 地元の中小企業にも目を向けてほしいです。親が喜ぶからという理由で入社した有名企業などは続かないことも多いです。自分を生かせる楽しい仕事をするのが1番だと思います。今はとにかく、インターンシップでもアルバイトでもなんでもいいので、仕事をしてみてください。そこで得られる大人の人と会話する経験は、その後の就職で役立ちます。


 今回、取材をしてみて、価値観が大きく変わったことがあります。それは、オーダーメイド枕だからいいとは限らないということです。市販の枕がその人に適しているとは限らないことは知っていましたが、オーダーメイドの枕にも善し悪しがあるとは知らなかったので驚きました。山田朱織枕研究所さん専属の枕診断士さんが計測した枕がベストなんですね。
 取材は、自分達が控える就職活動の参考にもなりました。大きくて有名な企業だからいいとは限らないことを学べました。私は今、自分の適正を見極め、自分に本当に合った会社で働きたいと強く思うようになりました。

<取材協力>